新型コロナ外出自粛要請を甘く見ないで、戦争を体験したあるクロアチア人のメッセージ

Mami Kosakai

5年 ago

まったく想像していなかった日常

クロアチアで新型コロナウイルス感染者がはじめて確認されたのは先月2月25日。私が日本からザグレブに戻ってきたのも偶然なことに2月25日。

早かったような、長かったような怒涛の一ヶ月でした。

一ヶ月前に日本を発った時、今ザグレブが、クロアチアが、世界がこんなことになっているなんて想像していませんでした。

クロアチアでは2月25日に感染者が確認され、3月9日から本格的な入国者の自主隔離措置がはじまり、徐々に厳しい監視体制がしかれるように。

3月19日には実質国境も閉鎖され、全土でスーパーと薬局を除く店舗以外すべて閉鎖。

そして22日からは公共交通機関の運行が全停止。

さらに22日の朝にザグレブで地震が発生しました。

先日、3月22日の地震で南側の尖塔の一部が壊れたザグレブ大聖堂

一ヶ月前にはちっとも想像していなかった異例づくめの日常がここにあります。

日本でも休校になったり、在宅ワークに切り替えられたり、卒業式が中止になったり「今までとは違うこと」「あたりまえがあたりまえじゃなくなった」という経験をされた方もすでにたくさんいらっしゃるでしょう。

でも、多くのお店はいつも通り営業しているし、公共交通機関だっていつもどおり運航しているし、まだ外だって気軽に出られる。世界の多くの国と比べると日本はまだ「今までの日常が続いている数少ない国のひとつ」だと思います。

ヨーロッパで増え続ける感染者数

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

スペインでは新型コロナによる死者が3400名を超え、正式に公表されている数としては、世界で一番多い国となったそうですね。世界ではすでに2万人が新型コロナにより命を落としたと報道されています。

クロアチアのお隣イタリアでは「ひょっとしたら感染者数の増加が頭打ちになってきているのでは？かすかな希望が見えたかもしれない」という報道もされていますが、依然予断を許さない状態。

クロアチアでも毎日じわじわと感染者数が増えており、25日時点では国内の感染者数は442名、死者1名、完治者22名と発表されています。

クロアチアでも、やはり他のヨーロッパ諸国と同様、基本的に不用意な外出は自粛が求められており、数日に一度の買い物以外みんな自宅に引きこもっている状態。

このようにヨーロッパ各国では、感染拡大防止のために自宅での自主待機、外出自粛が繰り替えし呼びかけられているというのに、一部従わない残念な人がいると何度も報道されています。

イタリアに住む人たちのなかには「ルールを守れない一部の身勝手な人たちのせいで、軍警察がパトロールするようになり、他の市民までがどんどん行動をさらに厳しく制限されるようになった・・・」と嘆いている人もいます。

パーティーをして集まったり、外をうろついたり、ビーチにくりだしたり・・・なぜ政府が自宅待機を呼びかけているのか、その意図を全く理解していない人が一部いるみたいです。

ヨーロッパ各国の医療従事者からは「これはバカンスではない！いったいいつまで外出を続けるんだ。指示に従わない身勝手な人間のせいで感染が広まっている」と悲痛な嘆きも届ています。

スペインでも度々そのような人がいると報道され問題視されていましたが、そのような状態を憂いたあるクロアチア人がこんなツイートを投稿しました。

（↑）これはを投稿したのはクロアチア人ハンドボールトレーナー、サシャ・ヨビッチ氏。

サシャさんは、新型コロナで自宅待機が呼びかけられているにも関わらず、外を出歩く人でいっぱいのスペインの町の様子を危惧してこのメッセージを投稿。スペインで大きな話題を呼んだそうです。

サシャさんは1991年から95年にかけて行われたクロアチア独立戦争の戦火を生き抜いた過去を持つ方。

「僕たちは地下室で過ごすことを余儀なくされたんだ。たった20㎡の地下室に、7家族、25名もの人間が肩を寄せ合って過ごした。食事も睡眠も、生活はすべて地下だった。家に帰ったのはシャワーを浴びる時だけ。外に出ると爆撃や銃撃で命を落とす可能性があったのだから」と続けています。

私たちも家でじっとしていると退屈で仕方なくなってくることもありますが、家の中で楽しむ方法はいくらでもあります。

料理を楽しむのもよし、本やマンガ映画を楽しむのもよし、テレビもスマホもネットもゲームもある。家の中に籠っていたって、いくらでも楽しく過ごせる良い時代です。

いろいろ考えさせられるメッセージだな、と思いました。

日本がちょっぴり心配です

ついに東京オリンピックの延期が発表されましたね。

選手の方はもちろん、頑張って準備をされてきた関係者の方などを思うと非常に難しい決断だったはず。でも、今の世界の現状を見ていると良い選択だったのではないかと思います。

3月に入ってからというもの、ヨーロッパと日本の新型コロナに対する危機感の温度差が心配でしたが、オリンピックの延期が決定した途端、東京では週末の外出自粛が知事により呼びかけられたそうですね。

知事の会見直後から、東京の一部のスーパーで保存食が品薄になったというニュースも目にしました。

日本は人口に比べて感染者数が少ない原因は「積極的に検査をしていないからだ」「いや、日本人は諸外国と異なり、衛生観念に優れているからだ」「日本は海外と違い医療制度がしっかりしているから大丈夫」など様々な意見が飛び交っていますね。

それから、「そもそも、イタリアやスペインなどで新型コロナで亡くなっている人は高齢者ばかり。平均年齢が高いということを理解せず、”コロナは怖い”とここまで騒ぐのはおかしい」というような意見も・・・。

どれが本当にせよ、どちらかというと「日本は大丈夫でしょ」という雰囲気が漂う日本の様子を見ていてあまり油断しないでほしいな・・・と本気で心配しています。

3月になり、クロアチアへの渡航者の隔離が始まり当ブログでも「隔離措置が本格的に始まっています。旅行は中止・延期になさってください」とはっきりとお伝えしたあとも、「実際に隔離措置ってどんな程度ですか？クロアチアに入国さえできれば、旅はできるんですよね？」というご質問を日本の方から何度かあり、「どうしてこうも”異常事態”が起こっているということ、危機感が伝わらないものなのか・・・」と驚いた記憶も新しいです。

不安な気持ちを煽りたいわけでは決してありませんが、みなさんもどうかくれぐれも気をつけてください。

根拠のない情報に振り回されたり、無駄に不安になったり、パニックになってはいけませんが、ある程度の備えとしっかりした心づもりと感染予防に対する意識が大切だということを、この一カ月ヨーロッパで過ごして身にしみて感じています。