【リエカ観光スポット】町のシンボル「時計塔」にまつわる楽しい豆知識
オーストリア帝国の影響を強く受けたリエカ。
町のシンボルである時計塔にもその影響を強く見て取ることができます。この時計塔は17世紀(1695)に建てられ、その後何度も改装されてきました。
まず特徴的なのはその色。オーストリア帝国(ハプスブルク家)の象徴である黄色で塗られていることに気が付きます。(「テレジアン・イエロー(※)」と呼ばれる黄色。女帝マリア・テレジアが好んだ色という逸話から、このように呼ばれています
(※)テレジアン・イエローとは俗称で「シェーンブルン・イエロー」あるいは「ハプスブルク・イエロー」とも呼ばれます)
また、時計塔の下に位置する石造りのゲートはレオポルド1世とカール6世のレリーフで飾られています。
そして最も興味深いのが、時計の文字盤のすぐ下に位置している双頭の鷲の彫刻。”双頭の鷲”は、ハプスブルク家の紋章として有名ですよね。ですが、よく観察すると、ハプスブルク家の鷲とは少し異なることに気が付きます。
大きく異なる点はふたつ。
まずハプスブルク家の紋章はお互いに逆方向を向いているのに対し、リエカの紋章の鷲は同じ方向を見つめています。
ふたつめは鷲が足に持っているもの。リエカの双頭の鷲は無限に水が流れ出す瓶を抱えているのです。これが意味するのは“オーストリア皇帝に対する絶えることなき忠誠”なのです。
かつてこの彫刻は塔のてっぺん付近に位置していたそうですが、第一次世界大戦後、イタリア人兵士の手により、ふたつあった鷲の頭の片方が切り落とされて(破壊されて)しまったそうです(ひとつ頭の鷲が意味するもの…それは“ローマ帝国”、つまりこの地を支配しているのは“オーストリア”ではなく“イタリア”ということを示唆するためです)。
そして第二次世界大戦後はこの彫刻は完全に撤去されてしまいましたが、現在はまた時計の文字盤の下にその姿を見られるようになりました。
町のシンボルである時計台にここまでたくさんオーストリア帝国の痕跡、オーストリア帝国を称えるレリーフが残されている理由…。それは265年以上前にも遡ります。
1750年、大地震に見舞われ、町の大部分が壊滅されたリエカ。当時この地を支配していたオーストリア帝国の女帝マリア・テレジアは、町の復興のために莫大な資金を投じました。
古い街並みが残る地域はそのまま残し、壊滅的な被害を被り何も残っていなかった海沿いの地に新たな街が建設されました。それが現在のリエカの中心地、コルゾ通りが伸びるエリアなのです。
町の再建が進められる中、リエカの彫刻家、アントニオ・ミケラッツィは”瓶を掴む双頭の鷲”の彫刻を取り付けました。きっと彼は、オーストリア帝国への感謝の気持ちを込めたのでしょう…。
現在リエカの時計塔には4面全部に時計が取り付けられていますが、これは1784年に当時“(現在のスロベニアの首都)リュブリャーナで最高の職人”と称された時計職人から購入したもの。
ですが、1873年になると、ウィーン万国博覧会に展示されていたゼンマイ仕掛けの時計に付け替えられました。それ以降、これら4つの時計は現在でもリエカの時を刻み続けています。
リエカを散策される際は、この小話をふっと思い出していただけると嬉しいです。
みなさんのリエカ散策が楽しい思い出いっぱいの時間となりますように・・・!
(小坂井真美)
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