環境保全のための様々な活動を行うヨーロッパの町に贈られる「ヨーロッパ・グリーン・キャピタル2016」に選ばれた、スロベニアの首都リュブリャナ。
そんなリュブリャナでは「都市養蜂」が積極的に行われています。都市養蜂とは、都会や市街地で巣箱を設置してミツバチを育て(養蜂をして)、ハチミツを採ること。
「養蜂」と言えば何となく、自然が美しい長閑な田園地帯で行われているイメージを持っていた筆者。リュブリャナを訪れるまで「都市養蜂」という言葉も知らず全く知らなかったため、「リュブリャナはビルの屋上などでミツバチを飼って、ハチミツを採る取り組みをしている人がいるんだよ」と初めて聞いた時とても驚いたのですが、最近では日本も含め、世界の様々な都市で取り入れられているそうです。
リュブリャナで、ある企業やホテルの屋上にある養蜂所を実際に見学させていただいたのですが、写真の通り、屋上にポツンとミツバチの巣箱が設置されていました。
スタッフの方がいろいろお話を聞かせてくださったのですが、一番驚いたのは、都市部でも自然豊かな田園地帯に負けないくらい高品質なハチミツが採れるということ。
「“都市養蜂で採れたハチミツ”と聞いて『街中でミツバチたちが集めた蜜からできたハチミツなんて、なんだか汚染されてそう』『本当においしいの?安全なの?』と不安がる人の声をよく耳にしますが、それは間違った先入観なんですよ。むしろ、農業が豊かな田園地帯、農村部で採れたハチミツよりもクリーンで品質が良いくらいです。
農業が盛んなエリアでは農薬の散布などが行われていることが珍しくありませんが、都心ではそのような心配もありません。それに、都会では意外にも1年中様々なお花が咲いているため、ミツバチたちも蜜を集めやすいんですよ。
また“街中でミツバチを飼うなんて、人が刺されるんじゃないか?危ない”なんて声もありますが、ミツバチはおとなしい生き物。人がミツバチを驚かさない限り、刺してくることは滅多にないんですよ」と興味深いお話をたくさんお聞かせくださいました。
実際に屋上で養蜂を行っているリュブリャナ市内のホテル『Hotel Park(ホテル・パーク)』のハチミツを頂いてみましたが、濃厚でとてもおいしかったです!
「都会で暮らしていると、人間は自然を意識したり自然に触れる機会が少なくなってしまいがちです。ですが、都市養蜂を通して人々の環境への意識が向上したり、街の緑化やエコ活動への関心が高まっています。
ミツバチたちは花が咲く美しい緑の街を私たちに与えてくれるだけではなく、街の活性化やより豊かな人々の暮らしなどにも大きく貢献してくれているんですよ。今後、もっともっとリュブリャナの都市養蜂の規模を拡大してゆき、その素晴らしさをたくさんの人に知っていただきたいです」とニッコリ話してくれたスタッフさん。
今後、このような取り組みがもっともっと広まれば、都市は人と自然が共存できるより豊かな空間になるのではないかと感じました。
「もしハチが地球上からいなくなると、人間は4年以上は生きられない。 ハチがいなくなると、受粉ができなくなり、そして植物がなくなり、 そして人間がいなくなる」という言葉があるように、地球上のあらゆる生き物、植物にとって欠かせない存在であるミツバチ。
最近、クロアチアでも養蜂に携わっている方々から「最近ミツバチたちの数が減ってきている。何かおかしなことが起きている」というような、とても不安になる言葉を何度か耳にしましたが、「都市養蜂を通じて、都会に住むたくさんの人々の意識が変われば、きっと何かが変わる」というスタッフさんの言葉を信じたいと思います。
(小坂井真美)