東西文化が交差する クロアチアのコーヒー事情
クロアチアは東西文化の交差地点に位置した国。地理的、歴史的背景からヴェネチア帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン=トルコ帝国など、東西双方の文化の影響を受けてきました。そんなクロアチアの複雑な背景の一部がこの国のコーヒー事情に現れています。
家で楽しむのはトルココーヒー
まず、クロアチアの家庭でよく飲まれているのがトルココーヒー。トルココーヒーとはコーヒーの淹れ方の一種で、コーヒー粉を水と一緒に沸かします。
オスマン帝国時代から現代に至るまで中東や北アフリカ、そしてクロアチアを含めたバルカン半島一帯で愛飲されてきました。面白いことに、トルココーヒーはクロアチアのほとんどのカフェではメニューになく、家で飲むのが一般的です。
>>>トルココーヒーについて詳しくは「クロアチア土産にも! トルココーヒーの淹れ方」をご覧ください
カフェで飲むのはエスプレッソベースのコーヒー
お家ではトルココーヒーを楽しむクロアチアの人々ですが、街のカフェではオーストリアやイタリアの影響が色濃く見受けれます。ヨーロッパでは長い間カフェは人々の社交や情報収集の場として賑わい、多くの文学者、政治家や芸術家が集まり文化的・政治的にも重要な役割を果たしてきましたが、ここクロアチアも例外ではありません。クロアチアでもカフェ文化が根強く、特にザグレブはオーストリア文化の影響を受けたウィーン風の建物があり、オーストリア風の伝統的なカフェ” Kavana(カヴァナ)”や無数のカフェが市内に存在します。
クリームがたっぷりのったオーストリア風コーヒー(ウィンナーコー ヒー)はもちろん、地理的にイタリアに近いこともありクロアチアのカフェではエスプレッソベースのコーヒーを楽しむことができます。クロアチア人がカフェで頼む定番のコーヒーは”kava s mlijekom(カヴァ・ス・ムリェコム)”。英語で”Coffee with milk”と呼ばれるコーヒーで、エスプレッソにちょこっとミルクを足したビターなコーヒーです。ちなみに筆者のお気に入りは”bijela kava(ビエラ・カヴァ)”。英語で”White coffee”と訳されるコーヒーで、kava s mlijekomよりも更にミルクたっぷりのコーヒーです。
家で飲むトルココーヒーにしても、カフェで飲むエスプレッソベースのコーヒーにしても、かなりきつめのコーヒーがお好きなクロアチアの人々。実はクロアチアにはスターバックスが存在しないのですが、彼らはみんな口を揃えて「アメリカ式のコーヒーは薄くて僕たちの口には合わない」「カフェの醍醐味は座ってゆっくりとおしゃべりをすること。アメリカ式のテイクアウト中心のカフェは流行らない」と”スタバは流行らない説”を唱えます。そんな筆者は日本に帰る度、もしくはクロアチアに戻ってくるまでの乗り継ぎの空港でいつもスタバのドリンクを楽しんでいます。
なにはともあれ、家でトルココーヒーを飲み、外ではカフェでウィンナーコーヒーやエスプレッソを片手におしゃべりに花を咲かせるクロアチア人。とにかくおしゃべり好きな彼らにとってコーヒーは日常に欠かせない存在なのです。クロアチアへお越しの際は、そんなクロアチアの人々の混ざってカフェでのひとときをお楽しみください。